企業の「安全配慮義務」とは?

企業には、従業員が常に安心して働くことが出来る労働環境を築き、それを維持することが義務づけられています。これを「安全配慮義務」といいます。

労働契約法第5条では「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められており、企業がこれを怠ったことにより労働者に損害が生じた場合は、安全配慮義務違反となります。

企業は、従業員との雇用契約が成立すると同時に安全配慮義務を負う事になり、従業員の人数に関係なく1名でも雇用する場合にはその義務が生じます。

また、労働契約法第5条の条文にある「生命、身体等の安全を確保」とは、危険作業や有害物質への対策等はもちろんのこと、身体の安全だけでなく心の健康(メンタル面)に対する対策も含まれます。長時間労働による過労死や、ハラスメント等による精神的な不調が起こらないよう、心の健康を維持できる労働環境の整備も必要です。

現在では、コロナ禍の安全配慮義務としてテレワークを導入し、感染症予防対策としている企業も多くありますが、テレワーク環境による運動不足、肥満や生活習慣病の悪化、コミュニケーション不足や単独業務の継続による精神状態の悪化等、新たな安全配慮義務上の課題が発生し、企業に対応が求められています。

労働契約法に罰則はありませんが、被害を受けた従業員が、民法の使用者責任や債務不履行等を根拠に訴えを起こし、企業側の安全配慮義務違反が認められれば、企業は多額の損害賠償を支払うことになります。さらに、企業イメージの低下や、業績を悪化させる事態にもなりかねません。こうした事態にならないよう、各々職場の状況に合せて対策を講じ、従業員が安全・安心して働ける労働環境を築いていきましょう。