長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導結果を公表

厚生労働省は、長時間労働が疑われる事業場に対して令和4年度に労働基準監督署が実施した「監督指導」の結果を公表しました。このたび対象となった33,218事業場のうち、14,147事業場(42.6%)で違法な時間外労働が確認され、是正・改善指導が行われました。この中で実際の事例もいくつか公表されているので、そのうちの一つをご紹介します。

【 事例(接客娯楽業)】

立入調査で把握した事実

① ゴルフ場の運営を行う事業場(労働者約80人)において、コース管理の業務に従事する労働者が急性心不全で死亡し、長時間労働を原因とする脳・心臓疾患の労災請求がなされたため、立入調査を実施した。

② 脳・心臓疾患を発症した労働者について、発症前の勤務状況を確認したところ、ゴルフ選手権の準備のために業務が集中したことにより、36協定で定めた上限時間(月42時間)を超え、かつ労働基準法に定められた時間外・休日労働の上限時間(月100時間未満)を超える、最長で1か月当たり136時間の違法な時間外・休日労働が認められた。

③ また、時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた当該労働者に対し、時間外・休日労働時間に関する情報を通知していなかった。

④ そのほか、休日労働を行った労働者に対し、休日労働に対する割増賃金を全額支払っていないことが明らかになった。

労働基準監督署の指導(是正勧告・指導)

◆ 長時間にわたる違法な時間外・休日労働を行わせたこと等

・ 36協定で定めた上限時間を超えて時間外労働を行わせたこと

・ 労働基準法に定められた上限時間を超えて時間外・休日労働を行わせたこと

・ 時間外・休日労働時間を1か月当たり80時間以内とするための具体的方策を検討実施するよう指導

・ 時間外・休日労働時間が1か月当たり80時間を超えた労働者に対し、当該労働者に係る時間外・休日労働時間に関する情報を通知していなかったこと

◆ 割増賃金を支払っていないこと

・ 休日労働について3割5分以上の割増賃金を支払っていないこと

 

厚生労働省は、今後も長時間労働の是正に向けた取組を積極的に行うとともに、11月の「過重労働解消キャンペーン」期間中に重点的な監督指導を行うと公表しています。これを機に、自社の労務管理について、長時間労働が行われていないか点検し、必要に応じて改善等の措置を実施しましょう。